春琴 追記

追記

舞台には何もない。2メートルほどの木の棒を使い舞台変化を作り上げる。棒は松の枝になり、ふすま戸になり、階段になりと多彩に舞台を表現する。

以前、野田の芝居では、ヒモを使い舞台の展開を演出し、鴻上の芝居では、数枚のカーテンを使い舞台変化をみせた。

今回もそれらに近い演出の技法。このような舞台変化の技法は、好きだ。あくびなどするとおいていかれるかのような、見る側に集中を求めてくる。したがって見る側はますます舞台へのめりこむこととなる。



物語は、物語を読み上げるナレーションとともに進む。
春琴は、始め人形が演じる。
その人形を二人の黒子が操る。黒子は顔を見せている。人形の左で操るのが深津絵里
しばらく、それに気づかずにみていた。人形が話すにつれ、この声?と思うと、よく見ると深津がしゃべっている。
普段よりオクターブ高いかのような少しキンとする声だ。

9歳の頃の春琴は、女へと成長する。さすけは、春琴演じる人形とからむ。このシーンの演出見事である。

人形は、生身の女性に替わる。けどこの女性も、ただ人形の代わりでしかなく、二人の黒子が女性を人形として操る。
女性は、人形と同じ顔の面をつけて人形を演じる。

物語も後半を過ぎたあたりで、黒子の深津が春琴自身となり演じる。

この演出は、シンプルな舞台と誰もが知る物語をとても深め、舞台の世界へ観客を深く引き入れ包みこむ。

上出来の作品。