水に溶けていく

気持ち良くプールで泳ぐ。汗をかかない。プールでは汗をかかない。自転車やテニスだといっぱいの汗をかくのだけど、プールでは汗がでない。歩くほどの遅さでのろのろと1200メートルを泳ぐ。平泳ぎで。泳ぎはいつ覚えたのだろう?水泳教室に通ったことはない。学校でも教わったのだけれど、教わったのはクロールとバタ足だ。平泳ぎや横泳ぎは、見よう見まねで覚えた。教わったクロールは、満足に泳げない。100メートルがやっとだ。しかも途中で、何度もおぼれそうになる。長く泳いでいると、水に溶けてしまいそうになる。同化するのではなく、溶けるのだ。そんなことがあるわけない。でも、溶けてしまえると思う。溶けてしまい、僕がプールの水となり、水が僕となる。やがて水に溶けた僕は、海に溶けこむ。そして横浜の海から南のきれいな海をめざす。南のきれいな海から、そこへと深く深くもぐる。誰もどんな物も行ったことがない知らない深いところへ。深いところでは、時間がない。何ものもない。僕がいるだけ。永遠にいる。たとえれば、命の源にいるかのようなところだ。たとえれば、宇宙の誕生した場所のようなものだ。そんな感じのところにいてみたい。水に溶けていく。プールへ行こう。